■「心って、めんどくさいですよね」と、ある人が言った。
その人は、40代の営業部長。
数字にも、部下育成にも、上司との調整にも、そつがない。
「仕事の相談は山ほどされるけど、自分のことを話す場所がない」
そんなふうに言って、ふと、こう続けた。
「…ってか、自分のことって、何ですかね」
彼は本気で困ってた。
疲れてるのか、やりがいを失ってるのか、モヤモヤしてるのか、それが“自分でも分からない”ことに、一番消耗していた。
■「明確な悩みがないのに、カウンセリングなんて…」は誤解です。
心理カウンセリング=心に傷を負った人が行く場所。
──そんなふうに思ってる人は、まだまだ多い。
でも実際に多いのは、
- 明確な悩みはない
- でも、毎日なんだかザワザワする
- 口を開けば、全部言い訳みたいに聞こえる
- 自分の声が、自分の中でうるさくなっている
そんな“説明できない不調”を抱えた、真面目な人たちです。
■ 「本音の声」を、他人の声が上書きしてしまった結果
✔️ SNSを見れば、他人の成功と不安ばかりが流れてくる
✔️ 上司の期待、部下の目線、パートナーの言葉
✔️ そして、「ちゃんとしなきゃ」という内なる声
気づけば、自分の声が聞こえなくなっている。
■ 心理カウンセリングとは、“静かな場所で、自分の声を聞き直す時間”です。
- 言葉にならない感情を、いっしょに言葉にしていく
- モヤモヤの正体を、ひとつずつ取り出して棚に並べてみる
- 「今の自分って、こういう状態か」と俯瞰して見えるようになる
✅ 正論やアドバイスではなく、“対話”という地道なプロセスを通して、自分の思考のパターン・感情のクセに気づいていく。
■ 事例:完璧にやっていた女性管理職が、なぜか涙した理由
30代後半、女性マネージャーのRさん。
現場をまとめ、家庭もあり、部下からの信頼も厚い。
ある日、何気ない質問に、急に涙がこぼれた。
「“どうしたいですか?”って聞かれたの、何年ぶりだろうって思って…」
人のことばかり考えてきて、自分の“欲”や“願い”を封印していたことに、やっと気づいた。
そこから彼女は、「自分が主語の選択」を取り戻し始めた。
■ カウンセリングって、弱い人のもの?
違います。
ちゃんと生きてきた人ほど、どこかで“自分の声”を見失う瞬間がある。
それを責めないで、丁寧に拾い直す場所がカウンセリングなんです。
■ 心理カウンセリングを受けるべきタイミングは?
以下のどれかが“ほんの少しでも”当てはまったら、カウンセリングはあなたの力になります。
- 寝てるのに疲れが取れない
- 人の言葉に、妙に傷つく
- 最近、笑った記憶がない
- 感情のON/OFFが効かなくなってきた
- 「ちゃんとやってるはずなのに」と思うことが増えた
■ 最後に:言葉にならないものを、大切にするという選択
「話すことなんてないんですけどね」
そう言って来られる方が、本当によくいます。
でも、そのあと、10分もしないうちに、言葉があふれてくる。
本当は、話すことが“なかった”んじゃない。
“話していいと思える場所”がなかっただけなんです。
■まとめ:心理カウンセリングは、“話せる人”のための場所ではなく…
“話したくなかった人”のための時間なのかもしれません。
あなたの声を、あなた自身がもう一度、聞けるようになるまで。
そのプロセスに、私たちは静かに寄り添います。