■ 会社では「鋼のメンタル」が称賛されがちだ
30代後半の管理職、佐野さん（仮名）は、部下から“鉄の男”と呼ばれていました。
- どんなクレームも顔色ひとつ変えない
- 上司に詰められても、論理的に切り返す
- 感情を乱さず、判断ミスもしない
でも、ある日ぽつりと、彼はこんなことを口にしました。
「本当は、何かを感じなくなるために“強くなった”だけなんですよね。」
■ 「心を強くする」という呪い
多くのビジネスパーソンが目指す“強さ”って、
＝感情に動じない
＝プレッシャーに負けない
＝いつも冷静沈着
でも、それって本当に“心が強い”状態でしょうか？
たとえば──
- 怒りや悲しみを感じない自分
- 無感動な笑顔だけで人と接する自分
- 自分が壊れてることすら気づけなくなる自分
これって、“強い”というより“麻痺”してませんか？
■ 「柔らかくなる」ことで、人は本当にしなやかになる
心理・精神が安定している人って、意外なほど“感情的”なんです。
- 普通に落ち込む
- 感動して涙を流す
- 嫌なことを嫌と言える
でも、そのどれもに“引きずられない”。
感じても、溺れない。
折れても、戻れる。
そんな「回復力」が、本当の強さなんです。
■ 事例：壊れる前に柔らかくなった男の話
40代の経営企画職、岩井さん（仮名）は、10年以上プレッシャーのかかる部署で走り続けてきました。
ある日、何の前触れもなく電車に乗れなくなった。
「あ、これ“心が限界”ってやつだって思いました。
ずっと、何も感じないようにしてたツケが、まとめて来た感じです。」
それから彼は、毎週カウンセリングを受けるようになり、自分の“感情の筋肉”を少しずつ取り戻していきました。
- 「疲れた」と言えるようになった
- 嫌なことを「無理に飲み込まない」ことを覚えた
- 自分に“無理をさせないマネジメント”を学び直した
半年後、彼はこう語ってくれました。
「今の方が、人としてもマネージャーとしても“強くなった”って思えるんです。」
■ “精神力”とは、我慢強さではなく「戻ってくる力」
精神力と聞くと、「耐えること」や「自分を律する力」と思いがちです。
もちろん、それも一部は大事です。
でも、実は本質的な心理的強さって、
- 自分の感情に気づける
- 必要なときに助けを求められる
- ダメなときの自分を責めすぎない
という、“自分との関係性の深さ”なんです。
■ 問い：あなたの「強さ」、誰のためのものですか？
気づけば、
“期待に応えるための自分”
“叱られないための自分”
“評価されるための自分”
ばかりを生きていませんか？
本当の強さとは、
「本音のままでも、ちゃんと仕事ができる」状態です。
まとめ
✔️ 鋼のような強さは、壊れるときも一瞬
✔️ 柔らかさは、感じながらも立ち戻る“しなやかさ”
✔️ 心理的に強い人ほど、自分に優しく、感情に正直である
